これまでの脂肪注入の問題点2 主として「しこり」について Induration
なぜ、これまでの脂肪注入は、「しこり」ができていたのでしょう?それは以下の4つの原因が考えられます。
1)局所の高い内圧
先ほどの説明の通り、これまでの脂肪注入は、生着率(注入した脂肪が吸収されずに残る率)が低いものでした。そこで、予定量の約3倍の脂肪を注入しておく必要があったわけですが、そうすると、注入した部分の内圧が非常に上昇して、内部の血管を圧迫し、血流が悪くなります。簡単に説明すると、ゴム風船をいっぱいに膨らませた状態を想像していただければわかると思います。血流が悪くなると、当然のことながら、注入した脂肪に対しても、栄養や酸素の供給が減少します。さらに2)の、「注入した脂肪同士がお互いに接触し、固まる」という現象も起きやすくなるのです。そうすると、注入した脂肪の多くが壊死に陥ます。壊死に陥った脂肪は、白血球の一種であるマクロファージによって貪食(食べられる)され、そこから取り去られるのですが、その際には必ず炎症反応を伴います。炎症反応は、慢性的に長期間持続すると、石灰化の原因となるものです。バストの場合は、特にたくさんの脂肪を注入する必要があるため、壊死に陥る脂肪も大量です。したがって、炎症反応も慢性的に長期間に及びやすく、石灰化を伴うしこりの発生率が高くなります。
2)注入した脂肪がお互いに接触し、固まる
脂肪注入の手技は、脂肪をまとめて一気に注入するのではなく、少量づづばらばらに注入します。これは、注入した脂肪が、周囲の組織からできるだけたくさんの栄養や酸素を受け取り、生着するための絶対条件と言えます。植木をかためて植えるのと、一本一本分けて植えるのとでは、植木の成長が違うのと同じことです。しかし、これも大量の脂肪を注入する必要がある従来の脂肪注入では、注入した脂肪同士の距離が近すぎ、場合によってはお互いに接触してしまい、生着するために十分な栄養や酸素が、注入した脂肪に供給されません。たくさんの植木を、せまい庭に植えている状況です。その結果、生着にむらができたり、先ほどの1)の説明のような経過をたどって、壊死に陥った脂肪が吸収される過程でしこりが発生したりするのです。
3)太い吸引管での脂肪吸引で採取した大粒の脂肪
太い吸引管(カニューレ)で脂肪を採取すると、非常に短い時間で大量の脂肪が採取できます。しかし、採取された脂肪は、大きな脂肪の塊です。これを注入すれば、塊の中心部の脂肪細胞は、生着のために十分な酸素や栄養を、周囲の組織から受け取ることができず、壊死に陥ります。このように中心部のみが壊死に陥った脂肪の塊は、白血球の一種であるマクロファージが壊死に陥った脂肪を貪食するのも遅く、慢性的な炎症反応が長期に及びます。つまり、1)で説明したとおり、この場合も石灰化を伴うしこりの発生率が高くなります。「1から2時間でバストアップ」などと広告している場合には、ほとんどが太い脂肪吸引管での脂肪採取を行っていると思われます。実際、そのような施設での手術を受け、術後のしこりについて相談に当院を訪れる方も非常に多いのが現状です。
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